コロナ禍とタクシードライバーの限りなくリアルな日常を描いたノンフィクション小説の記事「 1年目から年収700万円を超えた凄腕タクシードライバーが直面した2020年のコロナウイルスと五輪延期 」から。コロナ禍における東京の街並みとその需要や供給について、タクシー乗務員の目線からみたらどう映るかという作品。

ノンフィクションということもあって、東京都内に実在する会社の名前がそのまま出てきたり、モデルとなる方のお名前も本名なのだろうか。限りなくリアルな姿が描かれているな、という印象がとにかく強い。

記事の題のようにタクシーって入社一年目からそんなに稼げるの?思う方もいるかもしれないが、釣りタイトルではなく、やってくる人は確かにいきなりその数字を叩きだす。文中にも「タクシーって要はセンスじゃないですか」という部分があるように、お客さんを乗せる効率を高めていく中でこの言葉は必ず耳にする。

前々から思う所ではあるが、どんな分野でも秀でた成果を残してる人らを「センス」という言葉で安易にひとくくりに語るのはどうもピンと来ないと言うか、個人的に好きではない。効率を追い求める課程には必ず試行錯誤の実践があり、それを人によっては努力と表現するか、はたまた実験やテスト、やりたいからやってると表現するか、人によってとらえ方の違いはある。

努力を努力というほど立派なものじゃない、そう思えばそれは努力ではない。楽しいからやってるだけ、やりたいからやってるだけ、と言えばその通りである。センスで何事も片付けてしまうと、どうも特定の才能を持った人じゃなきゃ出来ないかのように聞こえて、シックリ来ないのですよ。

じゃあセンスって何よ?って考えると、スタートラインの位置が人によって違うのではないかと思う。富士山登りに例えると、一般的な人が麓の登山口からスタートするのに対し、センスがあるという人たちはいきなり2~3合目、もしくはいきなりスバルライン(富士山の自動車道路の1つ)で車でも行ける5合目から登り始めるような感覚に近い。

どっちが先に山頂まで登れるかと言えば、普通に考えればより高い位置から登り始めた方が先に登頂するだろう。このスタート位置の差こそ、そもそもの個々の持って生まれた能力などが挙げられ、人はそれをセンスと表現するのではなかろうか。



5合目からスタートしても、あぐらを掻いてそこそこでサボってしまえばそれまでだし、麓の登山口から登ってもサボらずせっせと登れば、結果的にはその人の方が先に山頂まで先に登ってしまう事だって十分にあり得る。まさに、童話のウサギとカメのようなリアルな話だ。

作中の登場人物が発するタクシーの売上におけるセンスという言葉を、実際に同じ乗務員でもあるワタシなりに解釈すると、そのような構造に思える。ただ、センスがあるという人が努力と研鑽を一切惜しまなかった場合に関して言えば、到底かなわないのは十分に理解できる。プロのトップアスリートの世界はまさに分かりやすいその最たる例ではないだろうか。

タクシー業界は、トップアスリートの世界と違うので類まれなる才能が必要なくとも、研究を日々積み重ねればトップ集団に入るのは十分に可能だ。いくらセンスというものがあったとしても、生かすも殺すも自分次第だという事で、センスがなきゃトップ集団らと勝負にならないというのは誤解である。簡単ではないかもしれないが、入る余地は十分ある。

売上ばかりに捉われて、事故やトラブルが多いのはプロとは言えない。タクシーは乗務員の売上競争の手段ではなく、あくまでお客さんを乗せて移動する交通手段だ。安全の確保は輸送の生命と言われるほど、国土交通省の省令にもあるほど基本的な事にも関わらず、みんな忘れる。売上トップ集団と言われる人たちの方が目をつぶってる部分ではないだろうか。(もちろん全員が、ではないにせよ)

よく漁師さんの仕事にタクシーは例えられるが、確かに似た要素は強い。沖へ出て魚群を追い求めて網を張る。タクシーにもやはり利用者層を魚群と捉えるなら圧倒的に利用者が多い場所・地区、時間帯があるのでそのポイントを抑える。その積み重ねと効率を高める事で、売上を伸ばすという仕事。

ただし昨今のコロナ禍の諸事情で街は完全に変わってしまっている。今までの経験や知識が通用しない時期に突入してしまった。そのリアルな実情を上記の記事は描かれている。何もタクシーに限らず、夜の街飲食店なども相当なダメージは受けているだろう。

タクシーに関していえば、コロナ禍と言えど昼間は堅調を維持していると言える。もちろん地域差は若干あれど、日中は通勤・通院・買い物など確実に動きがある顧客層が中心なので、そういった需要のお客さんをお乗せすることが出来れば、大崩れする事はない。

影響がモロに出るのはやはり夜の街繁華街や飲食店に関わる部分での営業だ。もちろんタクシーもこれらのビジネスのお客さんの流れとは密接なので、夜の営業は極めて厳しいとされる。ただし表に出る人は出るのと、諦めて夜間営業をしない乗務員も増えているので、タクシーの絶対数が減っている。意外とお客さんを乗せることが出来るし、かえって営業しやすいという乗務員も一定数いるのだ。

営業におけるセンスは確かに大事だとは思うが、それ以上に重きをおきたいのが、諦めないで試行錯誤する姿勢だ。コロナ禍のこれだけ厳しい状況下でも、コロナ禍前と変わらない売上を維持する乗務員は少なからずいる。法人タクシーにおいては、努力やセンスよりも「どの会社に所属するか」も今のコロナ禍営業においては極めて重要な要素である。無線依頼の営業数が会社により圧倒的に違うからだ。

そもそも営業する以前に、それらの会社間情報を大まかでもいかに調べられるか否かでも、売上は今のような非常時は特に変化してくる。「寄らば大樹の陰」ということわざもあるが、どこか他人頼りにも捉えられがちだが、大きな流れには乗って然りだと思う。いかに有利に事を運ぶかも忘れてはならない。

タクシー営業は突き詰めていけば、世間一般の方が思われるより戦略の上に戦略で成り立っている。その思考はなんら大手企業さんの売上特化戦略などと考え方は変わらないのではないだろうか。

コロナ禍でかなり不利ではあるが、決して諦めてはいけない。タクシーに乗りたい人は少なからず存在するからだ。需要の動きが変化しているだけ。

PS

それでも忘れちゃならんのは、安全の確保。いくら売上が良かろうと、事故やトラブルがあれば営業どころの話しではないからだ。

散々こんな話ししておいてアレだけど、売上より自分だけの人生時間の充実の方がよほど大事なんだな、と最近は思い始めた。売上追い求めると、それだけ自分時間が減るからね。ヘタしたら何のために稼いだか分からなくなる。

売上=お給料(お金)を得る事だが、お金だけで満足するよりもお金が無かったとしても満たされる自分スタイルを探す事も、実はよほど有益なんじゃないかと最近は思ったり。ちょっと別角度の発想ですが。